初めての給与明細書の作り方【記入例・計算例付き】~全10手順で分かりやすく解説~

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初めての給与明細書の作り方【記入例・計算例付き】~全10手順で分かりやすく解説~

監修: 熊代 克己 税理士

会社の設立後、初めて従業員を雇った場合など、社長や未経験者が給与明細書を作らなければならないこともあるでしょう。給与明細書を作成するには、控除額などの様々な計算があるため、難しいものだと考えている方も多いのではないでしょうか。

しかし、手順通りやれば、給与明細書の作成は決して難しくありません。給与明細書の作成方法について、記入例や計算例などをまとめました。

目次

給与明細書とは?記載が必要な項目は?

給与明細書とは、給与の内訳を記したものです。給与を支払う者は給与の支払を受ける者に給与明細書を交付しなくてはならないと、所得税法第231条によって定められています。所定のフォーマットは存在しません。インターネット上で自治体などが公開しているテンプレートを使用したり、Excelで自作したり、あるいは手書きでも問題はありません。

労働基準法第24条に関する行政通達によれば、基本給、手当その他賃金の種類ごと、またその金額、源泉徴収税、労働者が負担すべき社会保険料額等賃金から控除した金額がある場合には、その事項ごとにその金額、口座振込み等を行った金額を給与明細書に明記しなければなりません。

また、このとき法律上の通知義務はないものの給与計算上の根拠ともなる事から有給の取得日数なども記載するとよいでしょう。

給与明細書の作成に必要な3つの書類

給与明細書の作成のときに必要な書類は以下の3つです。「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」は、日本年金機構から毎月20日頃に送付されてきます。「住民税課税決定通知書」は市区町村に住民税の特別徴収の届出を行うと送付されてきます。

  • タイムカード
  • 健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書
  • 住民税課税決定通知書

その他、「健康保険・厚生年金保険の保険額表」・「雇用保険率表」・「給与所得の源泉徴収税額表」も必要ですが、これらは関係省庁のホームページで閲覧・ダウンロードすることができます。以下の手順内のリンクを参照ください。

【記入例付き】給与明細書作成の10手順

それでは、実際に給与明細書を作成していきましょう。

Excelで作成した給与明細書の完成例は以下の通りです。このように自身で作成しても良いですが、インターネット上でダウンロードできる無料のテンプレートや、給与計算ソフトなどを使うのも良いでしょう。

給与明細書

給与明細書の作成手順は以下の通りです。それぞれの手順について、見ていきましょう。

給与明細書作成手順の流れ

STEP1.労働時間を集計する

タイムカードから総労働時間時間外労働時間を集計する

タイムカードを参照して従業員の1ヶ月分の総労働時間時間外労働時間を集計します。出張など普段とは違う行動を取った場合は摘要欄に記入しておきましょう。勤務日数の数え間違えを防ぐことができます。

STEP2.時間外手当を計算する

時間外手当を時間単価×割増率×時間外労働時間で算出する

時間外手当(残業代)は、上記の式で求めることができます。画像に記載した例で計算すると、基本給が250,000円、勤務時間が20日×8時間で160時間なので、時間単価は1,562.5円です。時間外労働の割増率は125%、今回の残業時間は10時間なので、1562.5×1.25×10=19531.25円が残業代です。円未満の部分に関しては50銭以上を切り上げるので、今回の残業代は19,531円となります。

STEP3.通勤手当を計算する

通勤手当を記入して課税対象かどうかを確認する

通勤手当の額を給与明細に記入します。次に、通勤手当が課税対象になるかどうかを確認しましょう。多くの場合は課税対象ではないと思います。

通勤手当が課税されるかどうかは通勤手段によって異なります。通勤手段はバス・電車など公共の交通機関の場合と、マイカーや自転車などの場合の2種類に分類することができます。

公共の交通手段の場合は1か月あたり150,000円(平成28年1月1日以後適用)までが非課税になります。なお、最短距離で最も経済的である経路の通勤定期の額を支給する会社が多いようです。

マイカー通勤などの場合は、マイカーなどで通勤する場合の通勤手当の非課税額は以下の表の通りです。なお、往復通勤距離÷燃費×ガソリン単価×労働日数という式を用いて算出している会社が多いようです。

片道の通勤距離1か月あたりの非課税限度額
2km未満全額課税
2km以上10km未満4,200円
10km以上15km未満7,100円
15km以上25km未満12,900円
25km以上35km未満18,700円
35km以上45km未満24,400円
45km以上28,000円
55km以上31,600円

STEP4.総支給額を計算する

総支給額は基本給+時間外手当+通勤手当で算出する

上記の式を用いて総支給額を算出します。画像の例で計算すると、250,000円+19,531円+10,000円=279,531円が総支給額となります。

STEP5.社会保険料を計算する

それぞれの保険料率表を参照して各社会保険料を算出して記入する

以下の通り、それぞれの社会保険料の金額を算出します。算出した金額を控除(給料から差し引く)の該当欄に記入します。なお、東京在住の40歳未満の労働者の例で計算しています。

健康保険料・厚生年金保険料を計算する

健康保険・厚生年金保険の保険料額表を参照して、標準報酬額を基に保険料を算出します。標準報酬額とは従業員(給与所得者)の4月・5月・6月の総支給額の平均です。今回は話の単純化のために、例に記載されている総支給額を基準に標準月額報酬とします。

保険料率表によると、総支給額が279,531円の場合の標準報酬額は280,000円です。表の折半額に記載されている金額が給与所得者の負担となるので、健康保険料は13,860円、厚生年金保険料は25,620円となります。また、子ども・子育て拠出金率は標準報酬月額の3.4/1000(0.34%)ですので、952円です。

雇用保険料を計算する

以下の厚生労働省のホームページを参照して算出します。通常労働者の料率は0.3%です。上の例では、「279,531円×0.3%=838.593円」、先程と同様に円未満の部分は50銭以上を切り上げるので、雇用保険料は839円となります。

STEP6.課税対象額を計算する

課税対象額は総支給額−通勤手当−社会保険料の合計で算出する

課税対象額は総支給額から通勤手当社会保険料の合計を差し引いたものです。上の例では、279,531円−10,000円−41,271円=228,260円となります。

STEP7.源泉所得税を計算する

源泉徴収税額表を参照して算出する

支給額から保険料を控除した金額を、以下の源泉徴収税額表に当てはめて計算します。源泉徴収税額表で用いる報酬額は、総支給額から社会保険料を差し引いたものになります。

上の例では、279,531円−41,271円=238,260円が報酬額となります。源泉徴収税額表によると、この場合は236,000円以上239,000円未満の分類に該当します。所得税額は6,110円(甲の場合)となります。

STEP8.住民税を記入する

住民税課税決定通知書を参照して住民税額を記入する

市区町村から送られてきた「住民税課税決定通知書」を参照して住民税額を記入します。手元にない、または届出をしていない場合は、市区町村で手続きを行いましょう。

給与所得者(サラリーマン)の住民税は原則として特別徴収という方法で徴収されます。特別徴収とは、住民税額を給与から天引きし、それを会社が各従業員の市区町村に納税することを指します。この特別徴収を行うためには、市区町村に届出を行います。そうすると、市区町村から住民税の総額と各月の金額を記載した「住民税課税決定通知書」が送られてきます。

STEP9.控除額を記入する

控除額は社会保険料の合計+所得税+住民税+生命保険料等で算出する

社会保険合計・所得税・住民税・生命保険料等を足し合わせたものが控除額となります。上の例では、41,271円+6,110円+10,000円+10,000円=67,381円が控除額となります。

STEP10.差引支給額を記入する

差引支給額は総支給額−控除額で算出する

最後に給与所得者の手元に渡る差引支給額の計算をします。差引支給額は、総支給額から控除額を差し引いたものです。上の例では279,531円−67,381円=212,150円が差し引き支給額となります。

おわりに

複雑に感じる給与計算も実はシンプルだということがお分かりいただけたかと思います。しっかりと理解できれば給与明細書の作成まで、エクセルなどを利用して対応することも難しくはありません。

しかし、エクセルなどで自身で対応する場合、税率や保険料が変更などの法改正について適宜確認し、改正があった場合にはそれをしっかりと理解した上で、対応方法の見直しなどが必要になります。また、ケアレスミスなどによる誤りも懸念されます。

そのため、このようなデメリットを解消または軽減するため、給与計算ソフトを利用したり、専門家である社会保険労務士にアウトソーシングする方法もあります。給与計算ソフトは、従業員の人数などに応じた料金形態のものが多く、人数が少なければ数千円程度の低コストで利用できます。また、給与計算や法改正への対応が自動化できるため対応コストを大幅に削減できます。ケアレスミスなども起こりづらいように工夫されているので、一度利用を検討してみることをおすすめします。

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