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プロパーローンとは?その内容とメリット・デメリットを徹底解説

2020/01/17
プロパーローンとは?その内容とメリット・デメリットを徹底解説

「プロパーローン」というローンをご存知でしょうか?不動産投資を始める際に銀行などの金融機関でローンを組むことが多いのですが、一般的には金融機関の「アパートローン」を利用します。

しかし、「プロパーローン」を利用して、不動産投資を行うことも可能です。

ここでは、プロパーローンとは何か、プロパーローンのメリットとデメリット、金融機関でプロパーローンを組む際の注意点などについて詳しく解説していきます。

プロパーローンとは

プロパーローンの「プロパー(proper)」には、「本来の、固有の、独自の」といった意味があります。

金融用語としてのプロパーの意味は、この中の「独自の」といった訳を当てはめると、プロパーローンの本来の目的を表すことができます。

つまり、プロパーローンとは各々の金融機関が独自のプランで貸し出しているローンのことをいいます。

このプロパーローンは、各金融機関独自のプランのローンであるため、金利や審査基準などは金融機関により異なる点が一番の特徴です。

主に事業者や企業向けのローンで、不動産の購入以外にも利用できますが、ほとんどの場合は不動産の購入を目的として利用されます。

通常自分が住まうための物件を購入する場合には「住宅ローン」を利用しますが、投資用物件など「収益物件」の購入のためには、住宅ローンの利用ができません。

収益物件の購入の際に利用できるのは、「アパートローン」か「プロパーローン」となります。

あまり一般的な商品ではないため、金融機関のホームページなどで紹介されていることはごくまれなので、普通の人にはあまり知られていないローンです。

しかし、プロパーローンにはアパートローンとは異なる点が多くあり、またメリットもあります。次の章でプロパーローンとアパートローンの違いについて解説していきます。

プロパーローンと一般的なアパートローンの違い

ここでは、プロパーローンと一般的なアパートローンの違いについて解説していきます。

既成(パッケージ型)かオーダーメイド型か

金融機関でアパートローンを組む際には、さまざまな条件があります。ローンを組む本人の年収や借入金額の制限、借入期間の限定などです。これらの条件の範囲内で組むことができるのがアパートローンです。

一方プロパーローンには、アパートローンのように一律に決まった条件はありません。本人の年収や勤続年数、購入しようとしている収益物件の利益率などの条件により審査が行われることは変わりがありませんが、金利や返済期間、借入金額の上限などは個々のケースに応じて変わってきます。

したがって、アパートローンが既成型(パッケージ型)であるのに対して、プロパーローンは借り入れを行う人の属性などに応じたオーダーメイド型の融資形態であるといえます。

保証会社の有無

アパートローンの融資を受ける場合には、ほとんどのケースで保証会社の保証を受けることができる人物または法人であることが求められます。

この保証会社とは、アパートローンの返済が万が一滞った場合にローン利用者に代わって銀行などの金融機関に返済金を建て替えてくれる会社のことです。

しかし、これはあくまで返済金の建て替えなので、保証会社が建て替えた返済金はローン利用者が保証会社に返済する必要があります。

また、保証会社に保証を依頼する場合には、多くの場合保証会社に保証料の支払いを行う必要があります。

一方、プロパーローンの借り入れを行う場合には保証会社を介在させる必要がありません

そのため保証会社の審査を必要とせず、銀行の審査のみで借り入れを行うことができます。

また、保証会社へ支払う保証料も必要ありません。

しかし、保証会社利用しない代わりに連帯保証人を設定する必要があります

なぜかというと、返済金を建て替えてくれる保証会社を利用しない場合、融資を行う金融機関側のリスクは上昇します。

その金融機関側のリスクを軽減させるために、連帯保証人を立てる必要が出てくるのです。

貸し出し用途が限られているか否か

アパートローンは、貸し出し用途が「限定された地域にある居住用不動産の購入」のためと制限されています。そのため、それ以外の目的、例えばテナントビルの購入や他の事業用に借り入れたお金を使うことはできません。

しかし、プロパーローンの場合はその使途は居住用不動産の購入に限られていないため、借り入れたお金を居住用不動産の購入以外に利用することが可能です。

また、アパートローンでは購入する居住用不動産の立地が制限されていますが、プロパーローンにはそのような制限がないこともアパートローンとの違いになります。

個人向けか事業者向けか

アパートローンが個人向けの不動産投資用ローンであるのに対して、プロパーローンは事業者及び企業向けの事業用ローンであり、不動産投資にも使用できる性質を持つローンです。

ですので、個人でプロパーローンを組むことはできません。プローパーローンを組む場合には、必ず法人化しておく必要があります。

借り入れ上限の有無

アパートローンには借入金額の下限と上限が決められています。例えばオリックス銀行の場合、借入金額は1,000万円以上2億円以下とされています。

参考:https://www.orixbank.co.jp/personal/property/

この借入金額の上限と下限は、各金融機関により異なりますが、アパートローンの場合には必ず設定されています。

この上限と下限の設定は、個人の属性などで変わることはありません。しかし、プロパーローンの場合にはこの上限と下限の設定はありません。

個人の属性や購入しようとする不動産の利益率により違いは出てくることは考えられますが、アパートローンのように明確な決まりのない点がプロパーローンの特徴です。

審査期間

プロパーローンの審査期間は、アパートローンの審査期間に比べて長いのが一般的です。その理由は、アパートローンはパッケージ型であるため、審査の手続きも定型化されていますが、プロパーローンは個々の案件に応じて審査を行うためです。

そのため、アパートローンよりプロパーローンのほうが審査期間は長くなります。

融資期間

アパートローンの場合、融資の条件は細かく設定されているため、決まった期間以上の融資を行ってもらうことはできません。前項にも例に出したオリックス銀行の場合、アパートローンの融資期間は1年以上35年以下と規定されています。

しかし、どの物件を選んでも自分の経済状況に応じた借入期間で借り入れることができるというわけではなく、建物の法定耐用年数と築後経過年数によりオリックス銀行側が定める範囲内の期間での融資となります。

プロパーローンは、オーダーメイド型のローンであるため、融資期間が一律に決まっているわけではありません

案件ごとに審査が行われ、最短融資期間と最長融資期間が決定されるため、一概に融資期間は何年までとは言えないのが、プロパーローンの特徴です。

一般的には建物の耐用年数とは関係なく、不動産経営を行う人がどの程度の期間安定した経営を行うことができるかを目安に融資期間が決定されます。

金利

アパートローンを組む場合には、あらかじめ金利は決まっています。毎回例に挙げているオリックス銀行の場合、店頭表示金利は令和元年10月現在、3年固定特約型の場合3.3%、5年特約型の場合3.5%、変動金利型の場合3.675%となっています。

このようにアパートローンの金利はほぼ一律に決まっていますが、プロパーローンの場合はそれぞれの案件により異なります

なので、一概に金利が何%であると言うことはできません。

限度額

アパートローンの場合、融資限度額は金融機関によって異なりますが限度額が明確に決められているため、いくら融資を受ける人の属性や物件の利益率が高くても、決められた限度額を超えた金額を融資してもらうことはできません。

しかし、プロパーローンを利用する場合には、融資を受ける人の属性や経営手腕、物件の担保価値や利益率などさまざまな条件により限度額が決められるため、融資限度額は個々の案件により異なります

金融機関のアパートローンの限度額を超えた金額の融資を受けたいと思う場合には、プロパーローンの利用を検討しましょう。

利用できるエリアの制限

アパートローンを利用して不動産経営を行う場合には、アパートローンの契約内容で定められた場所に収益物件を購入する必要があります。

その定められた場所とは、日本国内の都心部や都市部に限定されていることが多いため、それらのエリアから外れた場所にある物件を、アパートローンを利用して取得することは不可能です。

しかし、プロパーローンは、そのようなエリアの制限がないため、日本中、もしくは海外であっても利益を上げることができる物件であれば利用が可能です。

プロパーローンを組むことができる金融機関

プロパーローンは、メガバンクや地方銀行、ノンバンクなど基本的にどの金融機関でも取り扱っています

しかし、本人のそれまでの金融上の信用や実績、高収入であるなどの良い属性がないとなかなかプロパーローンを組む契約を結ぶことはできません

プロパーローンは契約を結ぶ人の収入や勤続年数などの属性、さらに購入を希望している物件の価値などにより、融資の可否が決められます。

また、金融機関やその支店の方針により融資の可否が決まることもあるので、同一人物かつ同一物件であっても融資の可否が異なることもあります

プロパーローンのメリットとデメリット

ここまでプロパーローンについて解説してきました。次に、プロパーローンのメリットとデメリットについて解説していきます。

メリット

プロパーローンのメリットは以下の4点です。

①保証料が必要ない

保証会社を介さずに金融機関から融資を受けるため、保証会社に支払う保証料が不要になります。よって、初期費用を安く抑えることが可能です。

ちなみに一般的な保証会社を介して2,000万円の融資を受けた場合には、およそ40万円程度の保証料が必要になります。

②上限額が決まっていない

アパートローンは金融機関により異なりますが、融資額の上限が決まっています。

いくら融資を受ける人の属性が良くても、また物件の価値が高くても、その上限額を超えた金額を融資してもらうことはできません。

しかし、プロパーローンであれば本人の属性や物件の価値によって融資限度額が決まるため、アパートローンの上限額を超えた金額を融資してもらうことも可能です。

③低金利のタイミングで固定金利の融資を受けることで金利上昇リスクを回避することも可能

プロパーローンを組む場合でも、変動金利で借り入れるか固定金利で借り入れるかを選択することが可能です。

ですので、低金利のタイミングで固定金利での借り入れを選択すれば、金利変動リスクを回避することができます。

④一般的なアパートローンと比較して金利が低い

プロパーローンは年収や勤務先、勤続年数や自己資金の多さ以外にも、家族構成や金融資産、そして経営者としての資質に至るまで融資の審査の基準となります。

このような基準で審査が行われるため、プロパーローンの契約者には、一般的なアパートローンの審査を通過するよりさらに高い属性が求められます。

しかし、これらの審査基準をクリアすることで、信用度の高い融資先と認定されるため、アパートローンより低い金利で資金を調達することも可能です。

デメリット

プロパーローンのデメリットは以下の3点です。

①銀行が独自で審査を行うため審査が厳しい

アパートローンの審査は規格化されているため、その年収や勤続年数などといったチェック項目をクリアしていればローンを組むことができます。

しかし、プロパーローンの場合には購入しようとしている物件で、採算がとれる経営を安定的に続けることができるかといった点なども審査されます。

また、極端に言えば融資を受けようとする人の印象や人柄もチェックされるため、審査はアパートローンに比べると厳しいものとなります。

②団体信用生命保険に加入しない場合は連帯保証人が必要

プロパーローンを組む場合に団体信用生命保険に入らない、または年齢等の条件で入ることができなかった場合には、連帯保証人を立てる必要があります

ほとんどの場合、連帯保証人に配偶者を立てますが、これは配偶者が専業主婦(夫)であっても変わりはありません。

なぜなら、融資を受けている人に万が一のことがあった場合に配偶者はローンの残った物件を相続放棄することはできますが、連帯保証人を降りることはできないためです。

そのため、残された配偶者がローンの残った不動産を相続し、同時にプロパーローンの返済も続けていくことが一般的です。

③融資を受けるためにはある程度の自己資金が必要

プロパーローンの融資を受ける場合には、ある程度の自己資金が必要になります。

プロパーローンは融資する側にとってリスクが高い融資方法なので、融資を受ける人がある程度の自己資金を持っていれば、不動産経営事業が破綻しづらく、返済が滞る可能性も低くなるためです。

プロパーローンの審査に通りやすい条件とは

プロパーローンはアパートローンに比べて審査が厳しいことは前述しましたが、その審査に通りやすい条件というものがあります。

その条件を以下に紹介していきます。

自己資金を多く準備できる

自己資金を多く準備できる人は、プロパーローンの審査に通りやすくなります。

前述したようにプロパーローンは融資する金融機関にとってアパートローンよりリスクが高い融資方法です。

融資を受ける人が自己資金を多く準備できる場合には、不動産経営が破綻し返済ができなくなるといったリスクが軽減されます。

そのため、自己資金を多く準備することができる人はプロパーローンの審査に通りやすくなります

融資を受ける人の属性が高い

融資を受ける人の勤め先が上場企業であったり、年収が高かったり、勤続年数が長かったりといった本人の属性が高い場合にも、プロパーローンの審査に通りやすくなります

このような本人の属性以外にも、金融事故歴がないといった点も重要なチェックポイントとなります。

購入予定の物件の収益性が高い

購入予定の物件の収益率も、融資の審査で重要なポイントとなります。

購入予定の物件の収益率が高い場合には、当然利益が多く出る可能性も高くなるため、プロパーローンの審査に通りやすくなるといえます。

融資を受ける際に注意すべきこと

ここでは、プロパーローンで融資を受ける際に注意すべきことを解説していきます。

できるだけ格の高い金融機関を利用する

自身の属性が高い人は、まずメガバンクなど格の高い銀行からプロパーローンで融資を受けるようにすることをお勧めします。

メガバンクと聞くとなんとなく尻込みしてしまう方もいらっしゃると思いますが、メガバンクのように格の高い金融機関から融資を受けることで、他の金融機関から追加で資金を調達する場合に、有利な条件で融資を受けることができる可能性が高まります

投資用の物件は慎重に吟味する

個人の属性が高いと、それだけでプロパーローンの審査に通りやすいため不動産会社は多少評価の低い物件を勧めてくる可能性があります。

そのような評価が低い物件であっても、個人の属性が高いとプロパーローンの審査に通ることもあるからです。

自分でもよく勉強し、よく吟味して良い物件を選ぶようにしましょう。

まとめ

ここまで、プロパーローンについて解説してきました。

プロパーローンとは何か、一般的なアパートローンとの違い、プロパーローンのメリットとデメリット、プロパーローンを利用するに当たって注意すべき点についてお分かりいただけたと思います。

プロパーローンで不動産投資用の資金調達を行う際には、ここで解説した内容を頭に入れ、プロパーローンのメリットを最大限に生かすことができる借り入れを行うようにしましょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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